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最高裁判所第二小法廷 昭和44年(オ)1274号 判決

主文

理由

上告代理人佐々木一珍の上告理由一について。

夫婦の一方が民法七六一条に基づく日常家事代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定すべきものではなく、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の規定を類推適用し、その第三者を保護すべきものと解すべきであるところ、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人を代理して本件手形貸付取引契約の連帯保証をなす権限が、被上告人の妻の日常家事代理権の範囲内に属するとは認められないし、上告人において、被上告人の妻の本件越権行為が被上告人夫婦の日常家事に関する法律行為の範囲内に属すると信じるにつき正当の理由があつたものと認めることもできない。結局これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、原審の認定にそわない事実を主張して原判決を非難するに帰し、採用することができない。

同二について。

原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠に照らし、正当として支持することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、適法になされた原審の証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用することができない。

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